サラリーマンの給料支払いは、中には「現金」と言う事業所もあるかもしれないが、最近はほとんどが銀行振り込み。
昔は封筒に入った現金をもらっていて、賞与など分厚い札束の場合は「横にしても立つ」なんて羨ましがられた人もいた。

そんな給与が「デジタル払い」で払われるようになるかもしれない?。
事業所が、銀行の口座を介さず、PayPayやauペイ等のスマートフォンの決済アプリや電子マネーを利用して給与等を支払うようになるかもしれないのだ。

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現在、厚生労働省がこれを検討しているらしいが、なぜ給与のデジタル払いを推進しようとしているのか?、その理由は下記の4点だそうだ。

①「新たな生活様式」に対応した規制改革推進の一環としての位置づけ
②外国人労働者の受け入れ拡充に向けた施策の一環
③キャッシュレス決済の推進
④調査の結果、一定のニーズがあると判断 

しかし、様々なリスクや懸念点についての指摘も挙がっていて、代表的なものは
①資金移動業者(PayPay等バーコード決済業者)の経営状態
②換金性の担保や個人情報保護等、従業員の保護の観点
などなど。

給与のデジタル払いは、これまでのように金融機関を介した通貨による支給ではない。
資金移動業者と呼ばれるQRコード決済や電子マネーによる決済を運営する企業を介してデジタル情報で支給が行われる。
そのため、資金移動業者の破綻や統廃合といった経営面の都合で、資金保全のリスクが発生しない制度設計にする必要がある。

また、仮に給与のデジタル払いが浸透していく場合でも、日常生活の中で一定以上の割合で通貨の利用は必要で、そのため、従業員が換金しようとした時に手数料が発生したり、制約が発生したりすることがないようなしくみにしなければならない。

この件、実は問題も多い。

「全額Paypayでいいよ」なんて言う従業員は少なく、「全額ではなくデジタル払いは一部にしてほしい」と言う従業員の方が多いと思われる。
と言う事は、今までの給与支払いシステムに新たな「デジタル払い」システムを追加しなければならなくなる。

つまり、給与を支払う側にとっては手間が二重になってしまう。
これは事業所にとっては大きな負担増となる。
「コンピュータで給与計算」が当たり前になっている昨今、システムの改修や追加は相当大きな負担となる。

そして、銀行振り込みであれば銀行口座開設時に本人確認が実施されているので問題は無いが、バーコード決済の場合はこの部分がかなり甘い。
現在のバーコード決済のほとんどが事前入金システムなので、残高がある分だけ、あるいは残高が不足していても紐づけされているクレジットカードからの即時入金で決済されるので、個人情報はそれほど重視されていない。
加えて、データ自体の盗難等の不安もある。

ちょっと想像していただきたい。
毎月25日に指定の口座に振り込まれていた給与が、システムの障害か何かで何日も引き出しできなくなってしまうとどうなるか・・・を。
クレジットカードなどを持っていればしばらくの間はしのげるかもしれないが、今の日本では「現金ゼロ」の生活はまだ難しい。
PayPayに送金されているはずの給与が誰か別の口座に行ってしまい、あるいは残高を盗まれてしまい、「当てにしていたのに残高に反映さずに利用できなくなってしまった」なんて事も現実味を帯びてくる。

今の段階で「給与のデジタル払い」をあえて検討する必要があるのだろうか?。
東京オリンピックの談合事件ではないが、どうにも関連業者に対する後方援助のような気がしてならない。

キャッシュレス決済の普及促進はわかるが、安定して利用できている給与支払いシステムにここで手を付ける必要があるのだろうか?。
この件については「キャッシュレス推進派」の私でさえもさすがに疑問に思う。